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医療コラム

心房細動について



心房細動とはどんな病気?

正常の心臓では、①洞結節(ペースメーカー)→②心房→③中継地点の房室結節→④心室と電気が流れます。これを洞調律といいます。
心房細動では、②の心房の部分が不規則に興奮して電気の流れが乱れ、心房が小刻みに震えるようになります(図1)。心房細動は、最もよくある不整脈のひとつで、高齢になるほどその頻度は増加して、80歳以上では約10人に1人は心房細動と言われています。高齢化とともに、患者数は2030年には100万人以上になると予想されています。

この不整脈は、高血圧や、弁膜症などの心臓病、甲状腺疾患などに合併しますが、約15%は基礎疾患のない孤立性心房細動です。精神的ストレスや睡眠不足、アルコール、不規則な生活などが原因となって引き起こされます。

心房細動は、数時間~数日以内に自然に止まる発作性心房細動から、しだいに持続時間が長く(7日以上)なり、やがて、いつも心房細動を起こしている状態になります。

正常時と心房細動をしている心臓の図解

(図1)

心房細動の症状は?

心房細動が新たに始まる時には、突然の動悸として自覚されることが多く、胸がもやもやする、胸が躍る、胸が痛い、めまいがする、階段や坂を上るのがきつい、息が切れやすい、などと感じることもあります。脈をとると「速くなったり、飛んだり」を不規則に繰り返し、間隔がバラバラの脈になっています。心房細動はすぐに命に関わることはほとんどありません。しかし、様々な不快な症状を伴うことが多いため、生活の質が低下することがあります。また、脈拍数が極端に速くなったり遅くなったりすると、失神や心不全を起こすこともあります。

検査方法

基礎疾患の有無や心機能を把握するために、甲状腺機能検査を含めた血液生化学検査、12誘導心電図、心エコー検査、胸部X 線検査、24時間ホルター心電図などを行います。

心房細動と脳のうこうそく梗塞

近年、心房細動が脳梗塞の重大なリスクであることが明らかとなっています。心房細動では、心房がけいれんするように小刻みに震えるため、心房内の血液の流れがよどんで、血液の固まり(血栓)ができやすくなります。血栓が血流に乗って運ばれて血管を詰まらせることを塞栓症といい、脳の血管が詰まると脳梗塞を起こします(図2)。このタイプの脳梗塞は心原性脳梗塞(脳塞栓症)と呼ばれ、脳梗塞の原因の30~40%を占めています。

心原性脳梗塞の発症は、発作性と永続性の心房細動で差はありません。症状の有無や程度にかかわらず血栓ができる可能性があり、心房細動では常に塞栓症のリスクがあると考えなければなりません。心房細動の増加に伴って、心原性脳塞栓症の患者さんも増加することが予想されています。

心房細動と脳梗塞の関係図

図2
出展「心房細動週間ウエブサイト」より

脳梗塞のリスクが高い人は?

心房細動では、すべての患者さんが脳梗塞になるわけではありません。心房細動の患者さんでは、心不全、高血圧、年齢(75歳以上)、糖尿病、過去の脳梗塞や塞栓症をおこした方は、心原性脳梗塞を起こす危険性が高いことがわかっています。

心房細動の治療

心房細動の治療では、脳梗塞と、不整脈に対する治療の予防の二つが重要です。脳梗塞を予防するためには、血液が固まりにくくする薬(抗凝固薬)を内服します。以前はワルファリンという薬しかありませんでしたが、最近では、新しい抗凝固薬も使用できるようになっています。不整脈の治療は、心房細動から洞調律に戻す、あるいは心房細動を予防するために抗不整脈薬を使用します。薬で戻らない場合には、電気的除細動(電気ショック)を行うこともあります。脈がゆっくりになる場合にはペースメーカーの植え込みが必要となることもあります。最近では、心房細動に対する根治療法として、原因となる心臓の一部をカテーテルで焼いて直すアブレーションという治療も有効です。

おわりに

心房細動は致死的な不整脈ではありませんが、心原性脳梗塞のリスクがあるため、早期の発見と治療が重要です。動悸や胸部の違和感などの症状がある場合だけではなく、症状はほとんどなく、脈の乱れだけが気になる場合でも、医療機関を受診して不整脈の検査をするようにして下さい。
※1:洞結節…心臓の右心房の上大動脈の開口部近くにある特殊な組織。一定のリズムで自動的に興奮する所で、その刺激が心臓全体に伝えられて心拍動が起こる。
※2:弁膜症…心臓にある弁に障害が起き、本来の役割を果たせなくなった状態。
※3:基礎疾患…ある病気や症状の原因となる病気。例えば、高血圧・高脂血症・糖尿病は虚血性心疾患の基礎疾患とされる。
※4:脳梗塞…脳の血管が詰まったり何らかの原因で脳の血のめぐりが低下し、脳組織が酸素欠乏や栄養不足に陥り、その部分が壊死すること。
循環器内科 加藤 秀樹
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